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2026-05-13
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【解説】系統用蓄電池(FoM)と需要側蓄電池(BtM)の違いとは? 〜「どこに置くか」で変わるビジネスモデルと収益の仕組みを徹底比較〜

こんにちは。Enememoの加藤です。

近年、「蓄電池ビジネスに参入したい」「補助金を使って蓄電池を導入したい」というご相談が増えています。一口に「蓄電池」といっても、どこに設置してどのように収益を得るかによって、ビジネスモデルはまったく異なります。

その代表的な区別が「FoM(Front of Meter:系統用蓄電池)」と「BtM(Behind the Meter:需要側蓄電池)」です。電力メーターの「前」に置くか「後ろ」に置くかという設置場所の違いが、収益の仕組みや活用できる補助金の種類まで大きく変えます。

今回は、この両者の違いを制度・ビジネスモデルの両面からわかりやすく整理します。蓄電池向けの補助金詳細については次回以降の記事で取り上げますので、まずは「そもそも何が違うのか」を理解するための入口としてご参照ください。

「メーターの前か後ろか」で決まる、2種類の蓄電池

蓄電池を電力会社との契約メーター(スマートメーター等)に対してどちら側に設置するかが、FoMとBtMの最大の違いです。

FoM(Front of Meter)=系統用蓄電池

FoMは、電力メーターよりも系統側(電力会社側)に設置される蓄電池です。経済産業省の定置用蓄電システム普及拡大検討会の資料では、「系統側に設置(Front Of Meter:FOM)され、系統安定化、周波数調整等に使用される系統直付けもしくは系統設備併設の蓄電システム」と定義されています。日本語では「系統用蓄電池」と呼ばれ、大規模な送配電網に直接接続されて動作します。

2022年の電気事業法改正により、出力10,000kW(10MW)以上の系統用蓄電池からの放電は「発電事業」として位置付けられました。これにより、系統用蓄電池を運用する事業者は、電力市場での取引や調整力の提供を通じた収益化が制度的に整備されています。

BtM(Behind the Meter)=需要側蓄電池

BtMは、電力メーターよりも需要家側(施設・建物の内側)に設置される蓄電池です。家庭用、業務用・産業用蓄電システムがこれにあたります。病院・工場・商業施設・公共施設などに設置される電力貯蔵システムがその代表例です。

系統用蓄電池が「社会全体の電力インフラを支える設備」であるのに対して、需要側蓄電池は「特定の施設・事業者の電気代を削減するための設備」という性格が強く、規模感も数十kWh〜数MWh程度が中心となります。

FoMの収益モデル:「市場で売る」ことで稼ぐ

系統用蓄電池(FoM)の収益は、主に以下の3つの電力市場への参加によって成り立ちます。

① 卸電力市場(JEPX)アービトラージ

日本卸電力取引所(JEPX)では、電力価格が30分単位で変動します。系統用蓄電池は、電力価格が安い時間帯(主に深夜・再エネ出力が多い時間帯)に充電し、価格が高い時間帯に放電・売電することで、この価格差を収益として獲得します。いわゆる「安く買って高く売る」裁定取引(アービトラージ)で、市場価格の変動が大きいほど収益機会が広がります。

ただし日々の価格変動に依存するため、収益の安定性は低く、AI・データ分析を活用した充放電タイミングの最適化が収益性を左右します。

② 需給調整市場:「調整力」を売る

需給調整市場は、電力の需給バランスが乱れた際に必要となる「調整力」を売買する市場で、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が運営します。応動時間の長短によって「一次調整力・二次調整力①②・三次調整力①②」の5種類の商品が取引されており、2024年4月からは応動時間の短い商品の取引も開始されました。

系統用蓄電池は応答速度が速いという特性から、特に短時間応動が求められる調整力商品との相性が良く、需給調整市場への参加が蓄電池投資の大きな動機となっています。

③ 容量市場:「供給力」を売る

容量市場は、4年後の電力の「供給力(kW)」を売買する市場です。OCCTOが年1回のオークション(メインオークション)を実施し、必要な供給力を確保します。系統用蓄電池は電力量(kWh)ではなく「電力を供給できる能力(kW)」を提供し、容量確保料として収入を得ます。

容量市場収入は月次で固定的に支払われるため、JEPXアービトラージや需給調整市場と比べて収益の予測が立てやすく、事業計画上の「ベース収益」として機能します。

また、容量市場にはメインオークションとは別に「長期脱炭素電源オークション」もあります。こちらは最大20年間の固定収入が得られる仕組みで、2024年の第1回オークションでは採択案件の約7割を系統用蓄電池関連が占めたとされています。参加には蓄電池容量10MW以上などの要件があります。

FoMの収益構造まとめ

系統用蓄電池ビジネスの典型的な設計は、「容量市場(kW収益)+需給調整市場(ΔkW収益)+JEPXアービトラージ(価格差収益)」という3本柱の組み合わせです。複数の収益源を積み上げることで初期投資の回収を図る、いわゆる「レベニュースタッキング(収益積み上げ)」が系統用蓄電池ビジネスの核心です。

BtMの価値創出モデル:「使う電力を賢くコントロール」することで節約する

需要側蓄電池(BtM)の価値は、電力市場で「売る」のではなく、施設内の電力利用を最適化して電気代を削減することにあります。主な仕組みは以下の3つです。

① ピークカット・デマンド削減

高圧・特別高圧で受電している工場・病院・商業施設などの法人は、電気料金の「基本料金」が過去1年間の最大デマンド値(30分間の平均電力の最高値)によって決まります。

蓄電池を導入すると、電力消費が集中してデマンド値が上昇しそうな時間帯に放電し、最大デマンド値を抑制することができます。年間を通じて最大デマンド値が下がれば、契約電力が下がり、毎月の基本料金を削減できます。電力多消費の工場・施設では、この効果だけで年間数百万円のコスト削減につながるケースもあります。

② ピークシフト(夜間充電・昼間放電)

夜間など電気料金の安い時間帯に充電し、昼間の電気料金が高い時間帯に放電することで、購入電力の単価を実質的に引き下げる手法です。太陽光発電と組み合わせれば、昼間の発電分を蓄電して夜間に使うことで自家消費率をさらに高められます。

③ 自家消費の最大化

太陽光発電と蓄電池をセットで導入した場合、昼間の発電余剰分を蓄電池に貯め、夜間や悪天候時に使うことで、電力会社からの購入電力量を最小化できます。固定価格買取制度(FIT)の売電単価が低下している現在、「売るよりも自家消費した方が経済的に有利」なケースが増えており、自家消費最大化の需要が高まっています。

BtMの価値創出まとめ

需要側蓄電池の価値は「電気代の削減額」として経営上の効果が明確に可視化できる点が強みです。「市場での収益」ではなく「コストが下がる」という形で直接的なメリットが生じるため、病院・工場・施設の管理者にとっては導入判断が比較的わかりやすい領域といえます。

「どちらを選ぶか」は目的と立場によって決まる

FoMとBtMは、どちらが優れているという話ではなく、「誰が、何のために蓄電池を導入するか」によって選ぶべき形態が変わるという整理が正確です。

電力ビジネスへの新規参入や電力系統の安定化に貢献したい事業者であれば、FoM(系統用蓄電池)が選択肢となります。一方、すでに施設を運営している病院・工場・公共施設等で電気代削減やBCP(事業継続)の強化を検討しているのであれば、BtM(需要側蓄電池)の方が目的に合致します。

また、両者は相互に排他的ではありません。需要側蓄電池の一部は、アグリゲーターを通じて仮想発電所(VPP)のリソースとして市場参加し、BtMでありながら需給調整市場や容量市場から報酬を受け取る「ハイブリッド」な活用も進みつつあります。

補助金活用にも「FoM」「BtM」の区別は重要

実は補助金の観点でも、FoMとBtMの区別は非常に重要です。系統用蓄電池向けには経産省・環境省それぞれに特化した補助金があり、需要側蓄電池向けにはSIIをはじめとする省エネ補助金・再エネ補助金との組み合わせ活用が考えられます。SIIなど一部の補助金は両者に適用できるものもありますが、要件や申請の手続きは異なります。

次回以降の記事では、系統用蓄電池(FoM)に特化した補助金の詳細と、需要側蓄電池(BtM)に活用できる補助金の詳細をそれぞれ取り上げます。今回の記事でFoMとBtMの基本的な違いを整理したうえで、引き続きご参照いただければ幸いです。

Enememoでは、蓄電池分野の補助金相談にも対応しています。「FoMとBtMのどちらが自社に向いているか」「どの補助金が使えるか確認したい」という段階からでもお気軽にお問い合わせください。