こんにちは。Enememoの加藤です。
昨今の燃料費・原油価格の高騰は、温浴施設・銭湯の経営に直接的な打撃を与えています。大量の燃料(重油・ガス等)を消費するボイラーは温浴施設の心臓部であり、老朽化したボイラーの更新は経営上の重要課題です。一方で、入浴料金が物価統制令により統制されている一般公衆浴場(いわゆる銭湯)では、燃料費上昇分を料金に反映しづらいという構造的な問題も抱えています。
今回は、ボイラー更新に活用できる補助金を、全国で使える国の制度と、特に補助金の充実している東京・関西(京都・兵庫)の自治体制度の両面から整理します。
まず知っておくべき前提:「銭湯向け補助金」の多くは自治体ごとの制度
温浴施設のボイラー補助金を調べる上で最初に理解しておくべき重要な点があります。一般公衆浴場(銭湯)向けの設備補助金は、国が全国一律で実施する制度ではなく、都道府県・市区町村がそれぞれ独自に実施しているという実態です。
東京都・京都府・神戸市など複数の自治体が銭湯向けの補助制度を持っていますが、対象・補助率・上限額は自治体ごとに異なります。さらに、これらの多くは「一般公衆浴場」(公衆浴場法の許可を受け、かつ物価統制令に基づく入浴料金の統制を受けている、いわゆる銭湯)に限定されており、スーパー銭湯・日帰り温泉・ホテル系の温浴施設は対象外となっている場合が多い点にも注意が必要です。
一方、業種を問わず全国で使える制度として、経済産業省・SIIの省エネ・非化石転換補助金があります。まずはこちらから解説します。
① 省エネ・非化石転換補助金(経産省・SII):全国どこでも使える可能性
高性能ボイラは指定設備に含まれる
省エネ・非化石転換補助金(SII)では、「高性能ボイラ」が電化・脱炭素燃転型(Ⅱ型)および設備単位型(Ⅲ型)の指定設備として明確に位置づけられています。国内で事業を営む法人・個人事業主であれば業種を問わず対象となるため、スーパー銭湯・日帰り温泉施設を含め、温浴施設全般が申請できる可能性のある補助金です。
補助率・スケジュール
設備単位型(従来枠・メーカー強化枠)の補助率は中小企業・大企業ともに1/3以内です。2026年度(令和7年度補正)は現在2次公募が受付中で、2次公募は2026年6月1日から7月9日にて実施中です。
注意点: SIIの補助金は「既存設備をより省エネ性能の高い設備に更新する」ことを前提とした制度であり、温浴施設向けに特化した制度ではありません。ボイラーの用途・仕様が指定設備の基準を満たすかどうかは、事前にSIIの補助対象設備一覧で確認する必要があります。
② 東京都:公衆浴場耐震化促進支援事業及びクリーンエネルギー化等推進事業補助
東京都は、「公衆浴場耐震化促進支援事業及びクリーンエネルギー化等推進事業補助要綱」(令和8年4月1日施行)に基づき、公衆浴場(東京都条例に規定する普通公衆浴場)の所有者・経営者に対し、耐震補強・燃料転換等に要する経費の一部を補助する制度を実施しています。
ボイラー・燃料設備関連の補助対象事業と数値
対象事業のうち、ボイラー・燃料設備の更新に直接関わるのは以下の2区分です。
「クリーンエネルギー化」:公衆浴場の使用燃料である重油・廃油・雑燃及びこれらの併用から、都市ガス・太陽光発電・ヒートポンプへ転換する事業が対象です。
- 補助対象経費の限度額:1施設750万円
- 補助率:補助対象経費の3分の2以内
- 補助金の限度額:1施設500万円
「既設ガス等燃料設備更新」:上記のクリーンエネルギー化を実施済みの浴場が、その後に行う燃料設備の更新が対象です。
- 補助対象経費の限度額:1施設750万円
- 補助率:補助対象経費の3分の2以内
- 補助金の限度額:1施設500万円
なお、耐震化補助事業(応急的修繕:限度額600万円・補助金400万円、計画的修繕:限度額1,200万円・補助金800万円、いずれも補助率3分の2以内)も同じ要綱に含まれています。
補助対象者の要件と申請上の注意点
補助を受けることができるのは、公衆浴場の所有者又は経営者であって、補助事業完了後5年以上の営業継続、事業税・都民税の未納がないことなどが条件です。補助事業完了後5年以内に廃業した場合は、休業していなかった期間に応じて補助金の返還を求められる規定があります。
申請手続きでは、交付決定を受けた日から50日以内に工事着手、申請年度末の3月31日までに工事完了という期限が定められています。事前に工程表・見積書・法人の登記事項証明書・納税証明書等の提出が必要です。
③ 京都府:京都府公衆浴場設備改善事業補助金
京都府では、日常生活に不可欠な公衆浴場を確保し、公衆衛生の維持及び増進を図る目的で、「京都府公衆浴場設備改善事業補助金交付要綱」に基づく制度を実施しています。
事業区分と補助率・上限額
京都府の制度には、大きく2つの事業区分があります。
① 浴場業用設備改善事業(ボイラー等の修繕・更新が該当すると考えられる区分)
- 対象経費:浴場施設及び付属設備の修繕に要する経費、更新に要する経費、その他知事が必要と認める経費
- 補助率:100分の15(15%)
- 補助限度額:1件あたり150万円
- 重要な下限規定:1件の事業の補助対象経費が100万円未満のものは補助の対象としない
② 浴場業用設備バリアフリー化事業
- 補助率:2分の1
- 対象経費が20万円未満または100万円を超えるものは対象外
ボイラーの更新・修繕は①の「浴場業用設備の修繕・更新」に該当します。補助率15%は東京都(3分の2)や神戸市(1/2)と比べてやや低めです。
申請上の重要な注意点
令和8年度の京都府公衆浴場設備改善事業補助金は、補助金申請額が予算上限に達したため、すでに交付申請の受付を終了しています。次年度(令和9年度)の公募が実施されるかどうか、実施される場合のスケジュールは、京都府ホームページ等での確認が必要です。
④ 神戸市:一般公衆浴場設備改修事業等補助金
神戸市では、「地域の銭湯の活性化に向けた協定」(平成29年9月7日締結)に基づき、公衆浴場営業者が行う設備改修事業等に対する補助制度を実施しています。この制度では、ボイラーを含む「給水給湯設備」区分が明確に補助対象として定められています。
- 対象者:神戸市浴場組合連合会に加入している公衆浴場の営業者
- 給水給湯設備区分(配管、貯湯槽、揚水ポンプ、滅菌器、循環ろ過器、ボイラー等):補助対象上限額400万円、補助率2分の1
- 大規模改修等事業(施設の建て替え・大規模改修):補助対象上限額6,000万円、補助率2分の1(10年間の営業継続が条件)
対象は神戸市浴場組合連合会に加入する一般公衆浴場に限られ、通常料金(物価統制令に基づく統制額)が適用される施設が前提です。
温浴施設のボイラー更新、まず何から確認すべきか
① 自社が「一般公衆浴場」に該当するかを確認する
物価統制令に基づく入浴料金の統制を受けている、いわゆる「銭湯」であるかどうかで、活用できる補助金の選択肢が大きく変わります。スーパー銭湯・日帰り温泉施設の場合は、自治体の銭湯向け補助金は対象外となる可能性が高く、①のSII省エネ補助金が主な選択肢になります。
② 所在自治体の制度と公募状況を確認する
一般公衆浴場に該当する場合、まずは所在の都道府県・市区町村に銭湯向けの設備補助金があるかを確認してください。京都府のように予算上限に達して受付が終了している場合もあるため、要綱の存在だけでなく最新の公募状況の確認が不可欠です。所属する公衆浴場組合に相談することも有効な手段です。
③ 補助率・下限規定を踏まえた事業規模の検討
京都府のように「対象経費100万円未満は補助対象外」という下限規定がある制度もあります。小規模な修繕を予定している場合は、補助金の対象になるかどうかを事前に確認する必要があります。
④ SII省エネ補助金との重複可否を確認する
自治体の補助金とSIIの補助金を同一設備に重複して申請することは、通常認められません。どちらの制度がより有利か、要件を満たすかを比較検討することが重要です。
まとめ
温浴施設・銭湯のボイラー更新に活用できる補助金は、全国共通の「経済産業省・SIIの省エネ・非化石転換補助金」と、自治体ごとに個別に実施されている「銭湯向け設備補助金」の2系統に分かれます。
Enememoでは、温浴施設・銭湯向けの補助金相談にも対応しています。「自社の施設がどの補助金の対象になるか」「自治体の制度とSII補助金のどちらが有利か」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

