こんにちは。Enememoの加藤です。
「AIやDX需要の拡大でデータセンターの電力消費が急増している」「サーバー室の空調や電源設備を更新したいが、専用の補助金があるのか分からない」。データセンターや通信施設を運営・利用する事業者様から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。
今回は、データセンターの空調効率化・電源設備更新、さらに新規拠点整備にまで活用できる国の補助金を整理します。データセンター専用の補助金というものは多くありませんが、経済産業省の省エネ・非化石転換補助金の対象設備には、データセンターの主要な省エネ投資がそのまま当てはまります。さらに令和8年度は、データセンターの大規模な新規設備投資を直接対象とした「GX地域共創補助金(データセンター設備投資型)」という、まさにこの分野に特化した新制度がスタートしています。
まず押さえておきたい事実:データセンター業は省エネ法のベンチマーク対象業種
経済産業省の補助金の公募要領には、省エネ法に基づく「ベンチマーク対象業種」の一覧が定められており、「データセンター業」が業種番号16として明記されています。定義は以下のとおりです。
データセンター業 データの処理を目的とした、データセンター(コンピュータやデータ通信のための装置の設置及び運用に特化した建物又は室)を運営し、又は利用し、情報処理に係る設備又は機能の一部を提供する事業
制度①:省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)空調・電源設備の更新に
データセンターの空調・電源設備の更新には、経済産業省の「省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)」が活用できます。現在、令和8年8月20日から9月28日17時までの3次公募が実施中です。
対象設備は、高効率空調(業務・産業用エアコン等、CRACが該当し得る)、変圧器(UPS付随の変圧器等が該当し得る)、冷凍冷蔵設備、高効率コージェネレーション等の指定設備です。
4つの事業区分と省エネルギー効果の要件
補助率は事業区分ごとに異なります。
- 先進枠:中小企業者等2/3以内、大企業1/2以内。事業所全体で計画省エネルギー率30%以上等の要件
- 一般枠:1/2以内(投資回収年数7年未満の事業は1/3以内)。計画省エネルギー率10%以上等の要件
- 中小企業投資促進枠:1/2以内(投資回収年数5年未満の事業は1/3以内)。計画省エネルギー率7%以上等の要件
- サプライチェーン連携枠:サプライチェーン上の4者以上が共同で策定した計画を支援。中小企業者等1/2以内、大企業1/3以内
単年度事業の上限額は15億円(非化石転換の場合は20億円)です。データセンターのような大規模施設の設備更新であれば、この水準は十分な支援になり得ます。加えて、事業規模が大きく単年度実施が困難な場合(原則、補助対象経費5,000万円以上)は、最大4年間の複数年度事業として申請することも可能で、複数年度事業の上限は20億円〜30億円/事業全体(非化石転換の場合は30億円〜40億円)まで拡大します。
設備単位でも省エネ要件が課される点に注意
事業所全体で省エネ要件を満たしていても、更新対象となる設備単位ごとに、指定設備であれば「省エネ率10%以上」「省エネ量1kl以上」「経費当たり省エネ量1kl/千万円以上」のいずれかを満たす必要があります。事業所全体では要件を満たしていても、個々の設備単体の省エネ効果が低い場合は補助対象外となる点に、公募要領は具体例付きで注意を促しています。
手続きのスケジュール
交付決定は令和8年11月下旬を予定しており、補助事業は原則令和9年1月31日までに完了させる必要があります。実績報告書の提出期限は、事業完了日から30日以内または令和9年2月5日のいずれか早い日です。
設備更新を伴わないEMS導入による運用改善であれば「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」(補助率中小1/2・大企業1/3、上限1億円)も選択肢になります。
制度②:GX地域共創補助金(データセンター設備投資型)新規大規模投資に
令和8年度に新設された制度で、データセンターの新規大規模設備投資を直接の対象としています。 正式名称は「令和8年度脱炭素電源地域貢献型投資促進事業」で、経済産業省資源エネルギー庁・GXグループ・商務情報政策局情報産業課が所管し、専用の事務局サイト(gx-area-hojo.jp)で運営されています。
制度の位置づけと目的
本制度は「GX戦略地域制度」の4類型のうち「④脱炭素電源地域貢献型」に該当します。ほかの3類型(コンビナート等再生型、データセンター集積型、脱炭素電源活用型)が自治体を選定単位とするのに対し、本制度は事業者を直接の支援対象とする点が特徴です。事業目的は「電力需要家による脱炭素電力の活用及び脱炭素電源立地自治体への貢献を条件に、需要家がGX関連投資をする際のCAPEX支援を行うことにより、脱炭素電力の供給増と国内GX関連投資の拡大の同時実現を目指す」こととされています。
データセンター設備投資型の事業要件:PUE1.3以下が必須
データセンター設備投資型として採択されるには、次の要件をすべて満たす計画である必要があります。
- 日本の計算資源分野の競争力強化に資する事業であること
- 稼働開始から2年以内にPUE(電力使用効率)=3以下を達成すること
- 2026年度以降、データセンター業に係る省エネ・非化石転換法の定期報告内容等を、毎年度、事業者のホームページ等で公表すること
- 補助事業終了後も継続的かつ安定的に計算資源分野の競争力を維持できる計画を有すること
脱炭素電力の利用要件が独自かつ厳格
本制度の最大の特徴は、事業実施場所で使用する電力の全量を脱炭素電力とし、かつその50%以上を同一都道府県から調達することが要件とされている点です。さらに、製造設備投資型では認められている「企業版ふるさと納税等による遠隔地からの地域貢献」というルートは、データセンター設備投資型では認められておらず、必ず脱炭素電源の立地都道府県内に設備投資を行う必要があります。
なお、新設・再稼働電源でない既設電源のみを活用する場合、その電源の立地都道府県は「脱炭素電力供給地域」に該当する都道府県に限られます。 脱炭素電力供給地域は、都道府県ごとの脱炭素電力自給率(脱炭素電源による発電電力量÷消費電力量)が全国中央値(27.7%、2024年度実績)以上であることを基準に指定される予定です。
補助率・補助上限額
電源との紐づき(自家発電・コーポレートPPAか、脱炭素電力メニューか)と電源の種類(新設・再稼働電源か、既設電源を含むか)の組み合わせにより、支援強度が3段階で決まります。
- 新設・再稼働電源のみを自家発電・CPPAで調達:補助率50%(大企業33%)、上限250億円
- 新設・再稼働に加え既設電源も自家発電・CPPAで調達:補助率40%(大企業25%)、上限250億円
- 新設・再稼働・既設を問わず脱炭素電力メニューで調達:補助率30%(大企業20%)、上限100億円
補助対象経費:データセンター特有の設備が具体的に列挙
データセンター設備投資型の補助対象経費は、次のとおり具体的に例示されています。
- 建物等取得費:データセンターの建物躯体、電源設備、空調等サーバー冷却設備、耐震・制震・免震設備、消火・消防設備、セキュリティ設備等
- 設備費:受電設備、送電専用線、伝送用専用線、送受信機(ルーター等)、ケーブル、電源設備(無停電電源装置、発電・蓄電装置等。ただし非常用電源は必要最低限の時間とし、原則最大72時間を超えないこと)、監視・制御・測定装置
- システム整備費:データセンター設備用のサーバー類(ただし一部高性能なサーバー類は除く)
審査で問われる「地域との共生」という独自項目
審査項目には、データセンター設備投資型に特有の評価軸として「地域との共生」が設けられています。具体的には、対話窓口の設置や施設の設置・運用計画に関する地域への説明など、地域との継続的なコミュニケーション体制・計画を、日本データセンター協会(JDCC)が定める「地域共生ガイドライン」に準拠して具体的に記載することが求められ、地域での実践活動やデジタル技術の利活用促進を行っている場合は高評価とされます。データセンター特有の論点として、申請書類の準備段階で押さえておきたいポイントです。
申請主体・申請単位・フォローアップ義務
申請は、脱炭素電力の需要家となる事業者単独が原則とされ、発電事業者や自治体とのコンソーシアム申請ではありません(単独では計画が成立しない場合はリース会社等との共同申請も認められます)。申請単位は原則事業所単位です。
また、採択後は間接補助事業完了後3年間、事業実施場所における脱炭素電力の利用実績等について毎年度の報告義務が課され、電力要件・立地要件が未達の場合は補助金返還を求められる可能性がある点にも留意が必要です。
申請スケジュール:1次公募は終了、2次公募は10月中旬から予定
- 1次公募:受付期間 令和8年7月17日〜9月1日正午(本記事執筆時点で終了)
- 2次公募:受付開始予定 令和8年10月中旬〜受付終了予定 令和8年11月末
申請はJグランツを利用し、GビズIDプライムアカウントの取得が事前に必要です。アカウント発行には時間を要するため、2次公募を検討する場合は早めの準備をお勧めします。
間接補助事業の期間は交付決定日から令和12年(2030年)9月末までとされており、比較的長期のプロジェクトにも対応できる設計です。
まとめ
データセンター・通信施設の投資規模に応じて、活用できる補助金は大きく2つに分かれます。
- 既存施設の空調・電源設備の更新:経済産業省「省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)」(上限15〜20億円、複数年度事業なら最大30〜40億円、現在3次公募が9月28日まで受付中)
- 脱炭素電源立地地域への新規大規模投資:「GX地域共創補助金(データセンター設備投資型)」(上限最大250億円、3以下・脱炭素電力50%以上の都道府県内調達・地域との共生が要件、2次公募は10月中旬から11月末を予定)
データセンター業は省エネ法上のベンチマーク対象業種として明記されており、この点は前者の補助金の審査上のアピール材料になり得ます。
Enememoでは、データセンター・通信施設の補助対象設備の該当性確認から、GX地域共創補助金の脱炭素電力調達計画の設計、地域共生計画の策定支援、申請書類の作成まで一括でサポートしています。「自社の投資規模はどの制度に該当するか」「PUE要件を満たせそうか」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。

